ニュートンが嘘つきだったなんて今となってはどうでもいいことだけれど

プリンキピア初版
プリンキピア初版

 昨日のエイプリル・フールでジョーク・エントリーをかましたら、あろうことか妻がひっかかってしまって、なんだか釣り堀で針を投げたら自分の耳に刺さったみたいな気分になりました。笑ったけど。

 なので、嘘つながりでニュートンがかました「嘘」について少し。

 ニュートンと言えばリンゴが落ちてきたのを見て万有引力を発見したとか、そういう真偽不明の複数のエピソード(いずれも伝聞で細部に違いがある)で有名なんですが、そういうことではなくて、「科学的業績」についての話です。

 

 画像はニュートンの主著、『自然哲学の数学的原理』、通称『プリンキピア』です。

 ニュートン畢生の大作でありますから、さぞかし厳密に書かれていることだろうと思えばさにあらず。実験結果が彼の理論にそぐわない場合は、偽りのデータでごまかしているようなシロモノなのです。

 出版当初、反対派(主にライプニッツとその仲間)から異論が相次ぎ、2版以降はデータをさらにいじってます。ぱっと見てわかんないように。

 で、そのライプニッツとは微積分の発見をめぐっての争いもあり、3版以降はライプニッツの名前を本から削ってしまいました。

 このライプニッツとの微積分のごたごたもかなりいろんなことがありまして、とにかくニュートンは微積分の発見を「全部」自分の功績としたかったんですね。

 どちらもゆずろうとしない中、とある学術雑誌に第三者の記事が載ります。その記事は「公平に判断して、ニュートンの方が正しい」と結論づけていました。ニュートン派はこの援軍の登場におおいに力を得ました。

 が、しかし、実はこの記事はニュートンが「自分で」書いて投稿したものだったんです……

 

 それからこれは嘘というわけではないのですが、このプリンキピアに使用されている幾何学は当時ですら既に「古い」もので、最新で使いやすいのはやはりライプニッツの変数分離型の方でした。しかし、ニュートンはこの古いやり方にこだわり、イギリスの学会では全員それに倣うことになってしまいました。

 だって、その時期のイギリスの学会でニュートンといえば超絶絶対の専制君主で、逆らえば即座に抹殺されてしまったんですから。現にロバート・フックなんか、数多の業績から肖像画に至るまで焼き尽くされてしまいました。かろうじて「フックの法則」に名前が残ってるのは、彼がニュートンより7歳上の先輩だったからです。

 こんなふうな「こだわり」のおかげで、イギリスの数学は大陸より「百年は遅れてる」、と言われるようになってしまいました。

 

 こうした「スキャンダル」は何もニュートンに限ったことじゃありません。

 プトレマイオスだって、本当は天体観測なんかしてなかったんです。

 まあこれは「科学」の考え方が確立する以前なんだからしかたないとしても、化学結合を発見したジョン・ドルトンの実験のいくつかは今日でも再現不可能だし、ロバート・ミリカンなんかは電子の荷電量を測定したいう自身の実験結果をかなり大げさに広め、ノーベル賞をもらっちゃったりしています。

 パスツールも実験数を水増ししてたことが1993年に明らかになりました。しかもこれ、フランスのパスツール研究所がエイズ・ウィルスの発見について争ってる最中だったんで、間が悪いったらありゃしない。

 

 しかしそれでも科学の進歩はやむことなく、今もニュートンの業績の評価は揺るぎないものとなっています。ニュートンが嘘をついたからと言って、彼の発見した法則が嘘だったわけではないのです。

 

 まあ、科学と言っても所詮人間のやることですから、嘘はつきものなんですね。

 つい去年にもバレたばっかりですし。

 

プリンキピアを読む (ブルーバックス)

背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか (ブルーバックス)