【犬塚尭『南極』の出版企画】
『南極』は犬塚尭がH氏賞を受けた処女詩集である。
とっくの昔に絶版で、Amazonにすら登録ページがない。現在古書価は1万円前後。
バカな学生だった頃から犬塚尭の詩が好きだった。
犬塚尭死んでからというもの、いわゆる現代詩というものを読まなくなってしまった。
……
南極では物は腐らない
あざらしの夫婦が並んで死んだ
永い旅から帰ってきたら
何の腐爛も起さずに
雌は立ったままで
眼から氷柱を垂らしていた
犬が食ってしまったらしい雄は
赤い泥のような小さな塊りになり
クレパス沿いに点々と並び
一番新しいらしいのが
一本湯気を立てていた
……
この『南極』を再版できないだろうか。
できれば紙の本ではなく、1ページが畳大で、厚さ1ミリの鋼板で作りたい。極限まで磨き上げられた金属板のその中央に、小さな字で横書きで、硫酸で腐食させて焼き付けるのだ。
重量が何キロになるとか、知ったことではない。
ページごとに取っ手を付けて、読者が全力でめくるようにする。そういうふうにしたい。
土曜日に娘と行った『シャルロット・ペリアンと日本』展(目黒区美術館)で、会場で流されていたペリアンのドキュメンタリーを見ながら、ふとそんなことを考えた。
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