書物にとって一番残酷な運命とは何だろう?
炎で焼かれることだろうか?
発禁処分を受けて日の目を見ないことだろうか?
そのどちらでもなく、誰からも無価値と見なされ振り返られない、ということが一番残酷だろう。
こうしてみると、かつて歴史上の権力があれやこれや行ってきた書物への対抗手段と言うものは、まったく無駄だったことがわかる。
「膨大な書庫は危険な弾薬庫だ。王も、皇帝も、その存在を軍や兵器よりも恐れている」
(ロス・キング『エクス・リブリス』)
しかし実際は、百万の軍勢よりも、百年の平和の方が、ずっと多くの書物を「焚く」ことだろう。
何度か電子書籍について述べてきたが、実はそれほどに心配はしていない。
「書物の運命」(ファトゥム・リベローヌム)はその「内容」に左右されるものではないからだ。
手紙を入れて封をしたガラス瓶を海に流すように、手紙を着けた風船を空に放つように、人は「書物」を作りたがる。
それは決してネット空間ではなし得ないものだ。
さて……とりあえずここまで。
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