「あるあるある!」とついうなずきたくなる話

 たまに店においでになるとある大学の先生からうかがった話。

 

 ある大学の第二外国語で、ン十年ぶりにラテン語を選択する生徒がいた。

 教授たちは「え!」と驚いた。だってラテン語なんてもう一般には使われない死語だし、実生活で習って得することなんかない。就職に有利になることも一切ない。欧米だって使用する場面は極端に限られてる。新発見の生物に学名をつけるときとか。古文献をひもとくときとか。その大学にも一応先生はいることはいるが、普段は別な授業を受け持っていた。

 しかし、生徒のせっかくの向学心を無碍にするわけにはいかない。テキストに積もったほこりを吹き払い、とりあえずそれをコピーしたものを教科書にして授業を始めることになった。

 その奇特な生徒はちょっと派手めな格好をした女の子だった。髪は赤色に染まり、首にはたくさんのアクセサリーをたらし、爪はきらきらとかがやいている。

 教授はやや不審に思って授業の最初に聞いた。

「君は、どうしてラテン語に興味を持ったの?」

 女の子は少し照れくさそうに、しかし笑顔で元気よく答えた。

「はい、中南米の音楽に興味があったんで……」

 

 その後、この女の子が無事授業をまっとう出来たかどうかはわからない。

 

 でも習っとくといろいろ世界が広がっただろうし、キリスト教やヨーロッパの古典文学を研究するんなら必須だし、日本国内で習うのは先生探しも大変で、おまけに辞書はバカみたいに高いとくる。文法書は不親切なシロモノばかりで、古本屋でも安くない値段で売っている。良い機会なんだから、もったいないよね。

 この女の子がこのきっかけを生かして、古代ローマの研究家にでもなっていたら面白いのになあ。