ズッキーニ箱に集いて騒がしき

 こないだはアスパラでしたが、今度はズッキーニです。つやつやのズッキーニが緑のと黄色のと、箱の中でがやがやしてるのを見ると、(こいつら何をしゃべってるんだろう?)と思いたくなります。

 良いもの、生きのいいもの、自分が気に入ったものは、眼を離したスキにおしゃべりしてるんじゃないかとか、留守中に踊りまくってるんじゃないかとか、寝てるうちに勝手に増えてるんじゃないかとか、ついつい妄想したくなったりしますね。しませんか?

 本もそうですね。ふと気づくと大量にあるんで、「夜中に繁殖してないか、これ」とつぶやいてしまったりします。

 そりゃ、そんなわけないのは理性でわかってますけど、気持ちとしてはこの通りなんで。

 

 無生物が「夜中に動く」というのは怪談の定番ですが、出来のいい人形ってのはだいたい「夜中に動きそう。喋りそう。枕元で踊ってそう」なもんです。

 ペットも愛着が深くなると、なんだか会話できてるような感覚をもちますね。そして仕舞いには「化けて出るんじゃないか」と少し怖くなったりします。

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 ウチの黒猫がもらわれてきて、一年経ったかたたないか、ぐらいのころのこと。

 妻は仕事、娘は学校、私だけが定休日で家にいた。昼にふと眠気が差してきて、居間で少しうとうとした。

 深く眠りに落ちる前に、何か気配を感じて体を動かさず薄目を開けた。すると、座敷の方に黒い長い棒が立っているのが視界に入ってきた。

 (なんだろう?)と動かずにぼんやり眺めていると、やがてそれはウチの猫が後足で立ち上がっているのだとわかってきた。

 といっても、虫を追いかけて伸び上がってるというよくあるパターンではなく、前足をだらんと下げ、顔を前に向けて、人間のように立っているのだ。そして、そのままごく自然に歩き出すようにして、後足を一歩前方へ踏み出した。

 思わず「え」と声を漏らすと、すとんを前足を下ろして、こっちをじっと見ながら「にゃあ」と一声鳴いた。

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 といったことが昔ありましたが、もう普段はぜんぜんそんな様子はなくて、暑さに長く伸びて寝ているところは、遠目に黒ナマコのようであります。

 それからは、同じようにしているところを一度も見せてくれません。見たいですけどね。