えーっと追加の追加

 こないだ妻と一緒にコンビニに行って、妻が「知ってる人が載ってるはずだ」というので、週刊現代というやつを、大げさでなくほぼ十年ぶりくらいに手に取った。ぱらぱらめくって感じたのは、「なんというつまらなさだ」ということ。くだらないのは昔からだけど、昔はくだらないなりに面白みがあったと思う。それが今はただただ「つまらない」これが週刊雑誌でトップを争ってるのか。ややめまいがしたのはきっと暑さのせいだろう。対抗馬のポストの方は手に取る気にもならない。ポストは震災の時、やらせくさい自衛隊の写真が表紙になってるのを妻が買ってきたっけ。最初の記事を読むだけで、とてつもない忍耐力を必要とさせられた。この場合の忍耐力というのは、学校の朝礼でじっと気をつけをしていたりとか、結婚式で長々としたスピーチを聴きながら、目の前のスープがだんだん冷めていくのを見つめているときとか、そういう時に必要とされる類いのものだ。

 もはや週刊誌にトキメキを求めるのは、税務署員にジルバを踊らせるくらい場違いなことなのかも知れない。

 

 こういうのはインターネットの影響だ、としとけば簡単なんだけど、影響といってもいろいろあって一口には言えない。言えないけれど黙っていてもいいことはないので、わかる範囲で言うことにする。

 ネット社会になって感じるのは、とにかく「情報」というのが価値を持ち過ぎている、ということ。この「価値」というのが、これ以外の表現が上手く思いつかないのでとりあえずそう呼ぶんだけど、値段が高いというわけではない。むしろ安い。タダ同然、というかタダじゃなければ価値がない、みたいな逆転現象が起きている。大衆は基本的に情報を無料だと考えている、とマーク・ポスターは喝破したけれど、タダであることの価値があるようになるなんて、思いもよらなかっただろう。

 価値を持ち「過ぎ」だというのは、このタダからきている。無料だというのは、逆に考えれば「値段が付けられない」ということ。つまり、有料の情報よりも無料の情報の方が、価値があるかのようにふるまう、といった具合になってくるわけ。いきなりひねくれた言い回しになってしまったけど、それは「デマ」であっても同じように「価値」を持ってしまうからだ。

 じゃあ、週刊誌に載るような「有料」の情報はもう、倒産した会社の株券ほどの価値しかないのだろうか?

 

 と、こういうとこで恐らく、雑誌に関わっている人たちは勘違いをしている。

 自分たちの得た「有料」の情報を、「無料」のものと同質化しようとする。「同質化」なんて言わなくていいか。つまりは、ネットからネタを拾ってくるようになる、もしくはネットで見かけた情報に寄り添うようにして書くようになる、ということ。だって、タダの方が価値があるかのように見えるんだから、「価値がある」方に近づけて書いたらいいじゃん?と考えてしまうわけだ。いや、考えてるというか、無意識にやってるんだろうな、きっと。

 

 タダの方が価値がある情報というのは、おおむねそれに触れた人を「非凡」にする。正確には「非凡であるかのように」する。昔、そういうのは「あなただけにおトクな情報をお知らせします!」というセールスと同じで、だいたい詐欺と決まっていたもんだけど、それが「無料」になると詐欺ではないように思えてしまう。

 じゃあ、それと同質なものを有料な情報の場に持ってきたらどうなるかというと、炎天下のトタン屋根になめくじを置いたように、たちまちしなびてしまうものなのだ。道端になめくじの死体がならんでても、「それがどうした」としか思わないでしょう?現代とかポストとか、ほんとにそんな感じ。誰が買ってるんだ。

 

 凡庸さに背を向け、ネットの無料の情報に群がる人々に向けて何を発信しても無駄だろう。だって、有料で、紙に印刷された、物質化した情報は、「凡庸」なものなのだから。

 凡庸なメディアを維持することは、マスコミの「信用」を形成するもとになっている。

 そういえば、ニューズウィークが紙の出版をやめる、という報道があったが、誤報だったそうだ。

http://www.j-cast.com/2012/07/27140996.html

 ニューズウィークはあやうく「信用」を失うところだった。

 

 マスコミは「信用」できない、という声をちょくちょく見かけるが、もともとネットは「信用」に背を向けているんだから、あたりまえのことだ。インターネットで「マスコミは信用できない」という人は、マスコミではなく「信用」が嫌いなのだ。

 いや、「信用」を裏打ちする「凡庸」こそを否定している、ということだ。

 凡庸を否定するネットに集う人々が、リアルな社会でどのようなふるまいをするようになるのか。

 きっと、金融工学に精通してCDSをばらまいたり、サブプライム危機をまねいたり、はた迷惑なことをいろいろやってくださるんだろうな。

 

 

日本凡人伝 (日本の近代 猪瀬直樹著作集)

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コメント: 2
  • #1

    さめ (土曜日, 04 8月 2012 02:37)

    ホンダの企業風土に「自律・平等・信頼」の気持ちがあり、目標は「造って良し、売って良し、買って良し」だそうです。いきる原動力でもありますね(アンチニヒリズム)。通貨の奴隷になっていないかどうかの自己判断に使えます。「凡庸さ」「信用」「価値」を否定するのは、ルサンチマンを原動力としたすさんだ心なのかもしれませんね。

  • #2

    ひらきや (土曜日, 04 8月 2012 14:43)

    そのルサンチマンに自覚的でないのがまた問題ですね。