高橋悠治のまだ髪が黒かった頃の発言をいくつか

○グレン・グールドがコンサートをやめたのは60年代の半ばかな。あれもテクノロジーに結びついた前衛を信じてたんだよね、多分。

 

○マクルーハンが言うように地球が村(グローバル・ビレッジ)になってさ、トロント村に住んでいながら世界とコミュニケーションが出来るというようなことだったんじゃないの。

 

○でも、居ながらにしてメディアを通じて地球のどこにでも同時に存在できるというのは権力の表現でもあるわけよね。それを裏から言えば、自分はトロントに隠れ住んでいて、自分の虚像だけがコミュニケーションをやっているという感じかな。

 

○カフカのなかの声というのも面白いよね。音にすごく敏感な人じゃない。音楽が嫌いと自分でも言ってるし、実際わからなかったらしいけどね。そういう人が考える、あるべき音楽。動物の声とか、かすかな壁の向こうの響きとかがよく聞こえる人なんだね。そこから考えられる音楽は、かなり面白いものだと思う。それを切り捨ててしまった音楽が、いわゆる「音楽」なんだけど。

 

○これから千年なり二千年たって誰かが歴史を書くとしたら、日本民族はこの時期に自滅への道を急いでいたと書かれるんじゃないかな。

 

○最新テクノロジーを身につけて、それでもって壊滅しようとしているのが今じゃないか。だからこれからは、日本の資本主義の最先端がどんどん争って死ぬとか、そうならなきゃ嘘だという感じだけど(笑)

 

(朝日ジャーナル1988年12月2日号)