違いのわかる奥さんのためのコーヒールンバ

コーヒー・ルンバ

 なんか最近妻から浮気を疑われている。

 その根拠は私が煎れる「コーヒーに泥の味がする」からだそうだ。三浦しをんの小説にそういう話があるんだとか。推理力など働かせずとも原因はわかっていて、いつものコーヒー屋が豆の質を落としたからだ。

 しかし、そんならこないだ作ってくれた料理は、私に殺意を抱いてるんじゃないかと疑ってもいいような気がするんだが……それはまあ私一人の胸の内に納めておこう。なので、この行は読まなかったことにして欲しい。もちろん妻も。

 

 コーヒーはフェアトレードの店で買っている。他のそうじゃない’店でも買ってるけど、だいたいここがメインだ。でも、フェアトレードって変だよね。だいたいトレードってのは、どっちかに「片より」があるから成立するもので、本質的にアンフェアなものだ。

 だからといってどこぞビジネススクールの先生みたいに「フェアトレードなんか嘘だー」と騒ぎたいわけじゃない。世の中フェアなものなんか少ないし、ていうか、誰もが少しづつ「ズル」をしてるから金が天下を回ってるんだ、くらいのことは了解している。イギリスでLIBORをごまかしてた連中も、本音では「何が悪いの?」と思ってるだろう。

 なんか世間では「成功した」と一般に思われてる人が、フェアトレードについてぶつくさ言うことが多いようだ。なんでかというと、それは自分たちの「ズル」がバレるのが嫌だからだろう。隠してもバレバレじゃん?と思えるけど、彼らは「ズル」を「現実」と言い換えることでうまくごまかしたつもりになっている。

 この幼稚なごまかしの稚拙さ加減があらわになるとすっごく恥ずかしいので、「フェア」を謳う人間に「嘘だー」と声を荒げてしまうわけだ。なんだか思春期の若者みたいだね。嘘でもいいじゃん、問題は別のとこにあるよ、と大きな輪郭で考えないところなんか、昔のNHKでやってたへんてこ番組に雁首並べてた連中そっくりの純情さだ。しゃべり場とか言ったっけ。

 

 みんなが「ズル」をして、みんなが「俺だけは得してる」と内心ほくほくしつつ、誰もそのことを口にしなければ社会は安泰なわけで、そこへ「俺は損しても平気だよ」なんて奇麗事をいうやつが出てくると、とーっても困っちゃうことになる。どういう風に困るかというと、みんな嫌な気持ちになる。ただそんだけ。別に損害とかない。

 こういうことは何もフェアトレード云々だけでなく、どこでも現れる現象だ。村なんかはもちろん、会社でも組合でも英会話サークルでも介護老人施設でも、学校でも学校のクラブでも家庭でも夫婦の間でも。

 ちなみに、私は風俗等いっさい行ったことがなく、女というものは妻しか知らない。そうしていると将来天国に行けるとか、誰かに約束してもらったわけじゃない。明日死ぬとわかったら、ゴミ捨て場にうずくまっていようか、などと考えてるくらいだ。だいたい天国を期待するなんて、それこそ「ズル」じゃん。

 でもこれ、なかなか妻に信じてもらえないんだよね。まあそういうもんだろうな、と思うけど、少し寂しくはある。

「戦争と女は似ている。知らぬものはそれについて語りたがり、知るものはただ沈黙する」

 どっかの哲学者のセリフみたいだけど、言ったのは名もないベトナム帰還兵だ。

 あまり女について語らないのも、余計に疑われるもとかもしれないな。じゃあ何をしゃべればいいのか。全然わからん。ヘタにしゃべれば怒り出すし。どうしよう。

 

 果たしてそれが「フェア」かどうか、判断する基準は曖昧だし、大相撲のように行事が目を光らせてるわけでもない。だから豆の質が落ちても値段が同じだからといって、あれこれ言おうとか、そういうことは一切ない。別にいいじゃん、わかっててもわかんなくても、わかんないままでいれば。たいして変わらん。そんなわけで今日も、「泥の味」のコーヒーを飲んでいる。いや、実際は、そんな不味くないと思うんだけど。

 

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コメント: 2
  • #1

    たぬ (水曜日, 05 9月 2012 15:00)

    読んだぞー。私の作った何がそんなに不味かったんだ??? ひぃちゃんのサンラータンとちゃうの? ぶりぶり。妻の悪口、ブログに書くのはやめなさい。ぶりぶり。

  • #2

    ひらきや (水曜日, 05 9月 2012 16:11)

    だから読まなかったことにしてくれよ……