なんとなく星新一風に書いてみたくなったので

 良く晴れた日の午後、エヌ氏は練兵場の隅で銃を磨いていた。

 すると、そこへアール氏がやってきて隣に座り、エヌ氏に話しかけた。

「ヒマだなあ」

「次の訓練はいつだっけ?」

「来月の頭だってさ。あんまり間があくと銃の撃ち方忘れちゃうよ」

「メシは?」

「さっきすませたとこだ」

 そう言ってアール氏は歯をせせった。

「たまには完全栄養食じゃないものを食べたいよ。カップ麺でいいから」

「カップ麺かあ……徴兵されてから一度も食べてないなあ」

 エヌ氏とアール氏はなんとなく互いの軍服姿を見て、なんとなく複雑な笑いを浮かべた。

「しかし、規則正しい生活にバランスのとれた食事、そして適度な運動ときたら、あとはもう長生きぐらいしかすることがないよ」

「いいんじゃないか?軍の病院に入って出てきたやつはいないそうだからな。身体は大事にしなきゃ」

「あ、そうそう、昨日の夜のテレビ見たか?」

「いや寝てた。なんか面白いニュースでもあったっけ?俺たちがどっかに派兵されるとか?」

「そんなニュースねーよ。だいたいこんな足手まとい、どっから派兵の要請が来るってんだ。じゃなくて、見たのはさ、なんかの生き物番組」

「なんかの生き物ってなんだ」

「番組名は忘れた」

「忘れてばっかだな。俺もだけど」

「いやそれでさ、その番組でやってたんだけど、アリって外で働いてる奴らは全部年寄りなんだってな」

「へえー。若いのは?」

「巣の中で餌の整理したり、幼虫の面倒見たり、女王アリの世話したりしてんだって。危ないお外のお仕事はすべて年寄りのアリがやってる。だから他の巣のアリと闘ったりしてるやつらもみんな年寄り」

「危険な分野は老人に、ってか。俺たちみたいだな」

「ああ。この制度考えたのが生物学者だったって噂、マジみたいだなー」

 エヌ氏とアール氏はシワだらけの顔をゆがめて笑いあった。

 この国に後期高齢者徴兵制度が施行され、七十歳以上の男子すべてが徴兵されるようになってから十年が経っていた。これによって、福祉も年金も軍事もまとめて解決されることとなった。

「あーあ、戦争でも起こんないかな」

「ムリムリ。もう世界中の高齢化した国が真似するそうだからな」

 

 

 

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