バーナード・ショーがやってきた!ヤア!ヤア!ヤア!

 昭和八年、なぜかバーナード・ショーが来日していいる。当時七七歳。とにかく過激なことを口走るこの皮肉屋の「いぢわるじいさん」が、どんな用があって日本に来たのか。

「私が来たんじゃない。適当に船が着いたから降りただけだ」みたいなことを言って知らんぷりしてたようだが、誰がセッティングしたのか荒木貞夫陸軍大臣と対談したりしている。

 三月八日の東京朝日に、その様子が少しだけ載っている。(以下新仮名遣いにしてあります)

 

ショウ翁「近代戦には個人的勇気など何の足しにもならない。筋肉の強さなど不必要だ。ボタン一つ押せばタンクが動き飛行機が活躍するようになれば個人の勇気や力など無駄になる。そうなれば私のような老人にも戦争ができる。一体今の戦争では若いものばかり動員するがそれは大間違いだ。八十歳ぐらいの老人を真っ先に動員して次は七十……六十と一線に繰出して将来役に立つ青年は後に残して置すべきだ」

 

荒木陸相「人と人との戦いだから科学兵器が極度に進歩してもそれは駄目だ」

 

シ「私はロシアのスターリンと会ってきたがあなたと話してみると主義のために自分の信念を断行する点では一脈通ずるところがある」

 

荒「日本の国防は他国を困らすのが目的じゃない。各国共存共栄のため皇道主義宣揚のための軍備だ」「日本の思想界が動揺しているように見えるが実は確固たる皇室中心主義を中心に左右に動いているだけで最後はいつも中心に還る。殊に日本は地震国だから国民は非常時に対して毎に準備されている。空襲など恐るるに足らない」

 

シ「私は臆病で怠け者だからロンドンが空襲を受けたとき逃れようと思ったが恐ろしくもあり面倒くさくもあってやめた」

 

荒「自ら臆病と知り怠惰と語るのは大悟徹底しているからだ。逃げないのは真の勇気だ」

 

シ「細菌撒布の戦術は真に悲惨で人道上はなはだ遺憾だ」

 

荒「毒ガスも人も殺すのをやめて数年間眠るのを用いることにしたらよい。眠らせられたものはその間天国のような夢を見て覚めた時には戦争が終わっているというようなのが理想的だ」

 

シ「人を殺さずに戦争するには科学兵器をうんと発達させて機械と機械だけで戦争すれば人を殺さないでよい」

 

荒「それは新兵器の政策で各国が競争する結果国家の財政を危うくし負担を重くして国民を苦しめるからいっそ昔に還って竹槍戦術が一番良いと思う」

 

 

 ……えーっと、どっかで聞いたような話をしてますが……まあいいや。こんな昔にこんなことしゃべってたんですねえ。

 ショーはフェビアン協会にも所属した社会主義者で、スターリンをほめたりもしてるんですが、なんなんでしょうね、これ。通訳さん大変だっただろうな。 ここに挙げたのは新聞に載った部分だけなので、載らなかった分はショー一流の諧謔が炸裂しまくってたんじゃないかと推測しますけど……なんかもったいない。

 

 ついでにこの荒木貞夫陸軍大臣は、それまで「国軍」とよばれていた日本軍を「皇軍」と呼ぶようにしたり、サーベルを日本刀に持ち替えさせたり、この後文部大臣になって「キミボク禁止令」(女学生が男っぽい言葉遣いしてはいけないとする命令)やら「パーマネント禁止令」を出したりしております。なんというか、小姑っぽいよなーと思わせられる、そんな人。要するにあんまり器が大きくない。

 この対談の一部だけでも、ショーがせっかく小粋なほら話をぶちかましてるのに、上手に受けきれていない。あ、でも毒ガス云々のとこはマシかな。

 

「みじめな気持ちになりたければ、自分が幸福かどうか考えてみればいい」

(ジョージ・バーナード・ショー)

バーナード・ショー名作集