小学校の学級会で民主主義の問題点をすべて学んだ

 確か小学校四年のときのことだったと思うが、一度だけ「学級委員」というやつをやったと思う。なんかあやふやに書いているのは、「学級委員」として何をどう働いたのやら、さっぱり憶えていないからだ。

  が、一つだけ記憶していることがある。学級会というやつが開かれると学級委員が司会を務めるわけだが、小学生のことだから当然じっとおとなしくなんてしていない。五分とたたないうちに隣とゴニョゴニョやり始める。すると私はその側へ言って、にっこりしながらこう訊いたものだった。

「ねえ、なにやってんの?」

 退屈なのはクラスの皆だけじゃない。学級委員だって退屈なのだ。面白いそうなことをしてれば、何をしてるのか知りたくなるというものだ。しかし、クラスメートはばつの悪そうな顔ですぐ黙ってしまうのだった。議事進行は副委員長の女の子が(必ず男女一組だった)やってくれたので、全部おまかせだった。私は、お喋りしたり手紙をやり取りしたり秘密の対戦ゲームをやってる人たちに、にこにこ話しかけることしかしなかった。

 今考えても、最低の学級委員だったと思う。

 

 学級委員は選挙で選ばれる。いっちょまえに。おそらく、みなさんも経験があると思うが、とにかく立候補するやつが全然いない。たとえいたとしても「ええ〜あいつかよ〜」と言われるようなやつしか立候補しない。「推薦で」と促されても、推薦したくなるようなやつがクラスにいない。

 要するに、クラスの中に「学級委員」なんてものにふさわしいやつなんか一人もいないのだ。

 それなのに学級委員を選ばなくちゃならない。なんで?いなくてもいいじゃん!とは誰も言わない。そんなこと言ったら先生に怒られるから。

 こういう状況に落ち入る原因が、みんなガキだったからなんて理由じゃないことは、大人になったみなさんは良くご存知のことと思う。

 

 さて、2010年から11年にかけて、ベルギーはとっっってもステキな状況にあった。

 541日間無政府だったのだ。

 一年以上政府がなくてもヘッチャラだなんて、うらやましすぎる。

 無理矢理選ぶくらいなら、なくてもいいじゃん?と言えるベルギー国民はとてもステキだと思う。フランス小話ではしょっちゅう間抜け扱いされてるけど。

 どうですみなさん、もし日本から政府がなくなったとしたら。

 そりゃー外交だの財政だのいろいろたいへんだってのは知ってますけど、いっそないほうがすっきりすると思いませんか?どじょう男だのぽんぽんイタいボクだの、やつらの顔を見なくてすむってだけで、GDPがはねあがりそうでしょ?株価だって爆騰まちがいなし!

 

 そして無政府状態にあったベルギーでは、これまたステキな動きがあった。

 G1000という運動があって、これは議員を国民の中からくじ引きで決めちゃおうってものだった。これもステキだ!

 http://www.g1000.org/en/

 だって、もしそうなれば「立候補」したやつのなかから、無理矢理選ぶ必要がなくなる。

 そう、民主主義の根本的な問題てのは、この「立候補」にあるのだ。

 とにかく、「立候補」なんてものをしたがるやつは、欲たかりとか勘違い君とかアル中とかセックスホリックとかバカとかアホとか間抜けとか、そんなのしかいない。これは大げさな表現ではなく、冷静な客観性に基づいた記述である。

 

 そして一番の問題点は、立候補したがるやつってのは、ほとんど民主主義てものを軽蔑してるということだ。それを隠さず口にするやつもいる。ヒトラーはそうして票を集めた。みんな小学校の頃すでに、民主主義というものにうんざりしていたからできたのだろう。ヒトラーは民主的に選ばれた。カート・ヴォネガットは言う「ヒトラーとブッシュの違いは、ヒトラーは民主的に選ばれたという点にある」

 だいたい、どんなに民主主義を尊重していても、「立候補する」という行為がすでに反民主主義の萌芽なのだ。

 

 民主主義には「立候補」という「ほつれ」がある。

 G1000は一つの答えだったけど、ベルギーはその実験の機会を持たなかった。残念。

 文盲率が一割を切った国でなら、裁判員のように議員を抽選で選んでもまったく問題ないと思う。あまりにもろくでもない人間ばかりが集まる可能性も否定できないが、ショウジョウバエの群から赤目や羽の短いのを選ぶ程度の選択肢しかない、そんな現状よりずっとマシだろう。

 それに、誰もが議員になる可能性があるのなら政治というドブの臭いも薄まるし、インターネットで政治ブログを書いてる息の臭そうな連中も、少しはその口を閉じることになるだろうから。だって、「実は優秀な自分」じゃなくて、新宿で泥酔して駅の花壇の花を引っこ抜いてるキャバクラ嬢とか、牛丼屋で飯をかっ込んでむせて飯粒まき散らしてる爺さんとか、巣鴨でパク・ヨンハのブロマイドを買いあさってるおばはんとか、金を払う段になってソープ嬢に説教始めちゃう大学の準教授とか、そんな人たちだって議員になれる可能性があるんだから。ああそれから、ブロガー自身の母親も。

 

 もし私が議員に「当たっちゃった」らどうするだろう?

 できることは一つしかない。

 経団連とか原子力規制委員会とか民主党本部とか自民党総裁選挙の現場とかに顔を出して、にこにこしながらこう訊くのだ。

「ねえ、なにやってんの?」

 

 

 

ベルギーを知るための52章 (エリア・スタディーズ)

人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ (河出文庫)