さっさと感動しろ!さもなくば……

 前々回の続きを少しだけ。

 

China to spend £70million sprucing up Nobel Prize winner's hometown

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/china/9617803/China-to-spend-70-million-sprucing-up-Nobel-Prize-winners-hometown.html

 

 なんか、90億円近くかけて莫言氏の生家や故郷の街や、映画『赤いコーリャン』(文中では“Red Sorghum” ) の舞台になった場所をきれいにしちゃおう、って計画が持ち上がってるそうです。

 小役人が莫言氏の父親に言いはなったセリフがすごいですね。

>"Your son is no longer your son, and the house is no longer your house,"

>"It does not really matter if you agree or not,"

 

 はあ。さすが中国共産党。有無を言わせません。

 莫言氏自身は、賞金で北京の高級マンションに引越すそうですが。

 

 そして文学賞受賞で火がついたのか、中国は今、時ならぬ文学ブームにもわいているようです。

 

 そういえば、大江健三郎が文学賞をとったとき、古本屋の百円均一の棚からすらも大江健三郎の本が消えましたっけ。次の年にはこれまで以上にあふれ返りましたが。そりゃ、普通に読んで面白いような小説じゃないですからね。

 

 ただ、「文学」てものは、読んですぐわからなくても、あとで「効いてくる」ということがあります。ありますというか、その方が多いです。漢方薬みたいなもんですか。

 通常、薬局で並んでいる色とりどりの錠剤は、わかりやすい即効性があるもので、こういうのは、すんなり読めてすんなり感動できる「小説」に似ています。

 ああ、いや、別に村上春樹氏を否定しようとか、そういうアレじゃありません。

 ただあのとき、とりあえず大江健三郎の小説を手に取ってみた人たちの中に、じわじわと薬効成分が染みこんだことは確かでしょう。カロヤン・ハイみたいに。

 すぐに「感動」してしまうと、それだけで効能は雲散霧消してしまったりすることが多いんですが、世の中の「体質」そのものに関わる効能は、より深く、かつ静かに効いてくるものなのです。「感動」で発散されなかったもやもやは、いつの間にか人の考え方や感じ方を、根本から「組み換えて」しまったりするんです。遺伝子レベルで。

 

 そういう遅効性の「文学」は、効能が目に見えるようになると、今度はそれを否定しようとしてもなかなか難しいものになります。

 とりあえず、中国の書店から莫言氏の本が消え去っているようですから、今後が楽しみってことですね。

牛 築路 (岩波現代文庫)