日本ではさっぱり注目されていない大統領選の見所を一つ

 CATVでCNNなんぞ見ますと、この時期朝から晩まで「大統領選が大統領選が大統領選が」でつまんないですね。

 だいたいオバマは知ってるけど、対立候補のロムニーって何もの?って感じです。

 そのロムニー君ですが、ここに来て支持率がオバマを越えたとか。

 

Romney 50 percent, Obama 47

http://www.washingtonpost.com/blogs/the-fix/wp/2012/10/25/post-abc-tracking-poll-romney-50-percent-obama-47/

 

 さて、もし次の大統領がこのロムニーってんなら、少しはこの化粧品のセールスマンみたいな顔したオッサンのことも知っておかねばならないでしょう。

 

 ロムニーは共和党の候補で、オバマとの対立軸は「経済政策」ですね。とにかく、金持ちをどんどんどんどん優遇すべきだ、というとってもわかりやすいことを主張しています。なんか単純化しすぎな感じですが、ほんとにこんなんなんですよ、おくさん。びっくりですね。でもアメリカ人はこういうの大好きなんです。毎度のことながら。

 

 さて、ロムニーのもう一つの特徴は、モルモン教徒だ、ってことがあります。

 もし大統領になれば、史上初のモルモン教徒の大統領です。

 それがなんですごいかというと、モルモン教徒ってのは、ずーっとアメリカで軽蔑されていたんです。ユタ州なんかモルモン教徒がたくさんいるからって、なかなか州として認めてもらえなかったくらい。

 

 モルモン教徒というと、40代以上の人は駅前で「チョットイイデスカァ〜」と声をかけていたのを思い出すことでしょう。私もかけられました。そしてついてったこともあります。でも10分くらいわけのわからん話を聞かされておしまいでした。「聖書買わない?」とすすめられましたが、「金ないから」と断りました。そんだけ。つまんないですね。

 日本に来たモルモン教徒の中には、タレントになった人もいました。ケント・デリカットとかケント・ギルバートがそうですね。両方ケントなんで、ウチのおふくろはよく間違えてました。

 日本人だと斉藤由貴ですか。尾崎豊と不倫してましたね。モルモンって、婚前交渉はダメでも不倫はオッケーなのか、なんてかげで言われてました。まあ、普通そう思いますわな。

 ところが、モルモン教徒ってのは、一夫多妻なんです。だから、尾崎と奥さんがモルモン教徒になれば万事解決だったんじゃないかと。なるわけないか。

 

 で、この「一夫多妻」が問題でして、だいたい合衆国の法律に反してるわけですから、普通には認められません。実は、ユタ州がなかなか州として認められなかったのも「一夫多妻」が大きな要因で、モルモン教会が「一夫多妻やめます」と宣言してやって州になれたんです。そして、彼らが軽蔑される原因もこれです。

 じゃあその「一夫多妻」に何か宗教的に重要な意味があるのか、というと、単に教祖のジョセフ・スミスがいっぱい愛人囲ってんのがばれちゃったんで、「モルモン教は一夫多妻」ってことになったんです。ご多分に漏れず、あとづけでぐだぐだ「教義」を加えたみたいですが。

 

 そして、こんなのは昔のことで今はちゃんとしてる、のかというと、さにあらず。宗教ってのは、かならず「原理主義者」が頑張っちゃうものでありまして……

 

“Sister Wives” explained: A foudamentalist Mormon Polygamy primer

http://religion.blogs.cnn.com/2010/10/25/sister-wives-explained-a-fundamentalist-mormon-polygamy-primer/

 

 ……とまあ、ぞろぞろ登場してますが、まだまだ数万人の単位で「一夫多妻」を実践してるんですね。

 では、一夫多妻の何が問題なのか?

 たまにテレビでインド辺りの一夫多妻のご一家が映ったりしますと、みんな和気あいあいで楽しそうだったりしますね。「こういうのもいいよな〜」なんて、うっかり思いそうになったりします。

 しかし、なんで社会が成熟するにしたがって「一夫多妻」が廃れてくるかというと、別に女が口うるさくなるからじゃなくて、「女」の価値が地滑り的に暴落するからです。で、「女」の価値が暴落すると、いっしょに「男」の価値も暴落します。ごく一部の金持ちの男を除いて。すると、社会そのものがずるずる落っこちてくんですね。

 こういう「一極集中型」が結局だめになるのは、一夫多妻に限りませんが。

 

 ここで、「女」の価値が暴落するというのはどういうことなのか、ユタ州のモルモン教徒の例で見てみましょう。

 まず、女の子は厳重に外の世界に触れないように育てられます。テレビ・ラジオは親が許可した番組だけ、読書はもちろん、書店に一人で行くことも禁じられます。パソコンなんぞもっての他。学校は義務教育だけ。化粧も不可、パーマも不可(親が望んだ場合は別)そして、12、3歳になると、親が決めた相手に嫁がされます。当然、夫には絶対服従を指導されます。

 

 ……うわあ、まだまだ世界にはこのような秘境が…とか驚嘆してしまいそうになりますが、21世紀のアメリカの話です。

 パキスタンで学校に通う少女が撃たれたとか騒ぎになってますが、アメリカだって人のこと言えた義理じゃござんせん。さっさと米軍はユタ州を占領すべきなんじゃないか、と思ってしまいますね。

 

 そして、多くのモルモン教徒は今回の大統領選に多大な期待をいだいているのです。

 ロムニーが大統領になりさえすれば、モルモン教の教義が正当なものと認められ、「すべてが」許されるはずだ、と。マジで。

 

 

Modern Polygamy in the United States:Historical, Cultural, and Legal Issues

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

THE HANDMAID'S TALE