社会が進歩するとかしないとか認識できる機会は書物の中に多く含まれている

…………結婚して独立するのは、経済的かつ精神的な成熟を獲得してからにしろというのは、社会の正当な要求です。しかし、生き残り競争が激化したために、男の経済的な自立がだんだんと難しくなってきています。職場や生活技術の複雑な要求は、精神的自立をますます遅らせます。他の人の生活の責任を負い、子供をちゃんと養育するには、しっかりした性格が必要ですが、そうした性格は、さまざまな困難な状況や、迷いや、経験などを経て形成されてくるものです。したがって、男がきちんとした形で妻をもてるようになる時期は、ますます遅くなります。それに対して、身体の造りはこれにならうことはしません。性衝動は、昔同様に、かなり早い時期に目覚めます。文化が高度になればなるほど…………

 

 のっけから引用してしまいましたが、これ、いつ頃書かれたものだと思いますか?

 つい最近書かれたものだ、と言っても充分通用してしまいそうです。

 実はこれ、1892年に書かれたジンメルの『現在と将来における売春についての覚え書き』からの引用なんです。十九世紀っすね……

ジンメル・コレクション (ちくま学芸文庫)

 こういう「問題」に対して、人類はずーーーーっと答を出せないでいるわけです。少なくとも百年以上。それでトラブルが起きると「最近の若いもんは!!」とキレたり、ヘンな法令を山ほど作ったりしてごまかしてきました。

 ジンメルは「すぐに解決できることじゃない。規制すればすむことじゃない。とりあえず男女を平等にしていくことから始めよう」と提言します。

 哲学者であり、社会学者であったジンメルは、表面的なごまかしでは解決できないことがわかっていました。

 

 ジンメルは「チビのユダヤ」でしたが、とってもモテました。哲学者としては異例。そして女性や恋愛についても多くの著作を残しています。これもまた異例。

 もっと評価されてもいいと思うんですが、「日本の社会学者は田舎モンばっかりだったから、都会的なジンメルを受け付けなかった」と、大学で社会学概論の佐藤智雄教授がおっしゃってました。

 ジンメルの「精神的後継者」は、ベンヤミンが有名です。こちらもおすすめ。

 

 

パサージュ論 (岩波現代文庫)