『詩の戦争』は今も続いているのだろうか

…………「きみのためには何でもしてやっただろう、お若いの!きみをきみのアウアから離乳させた。金属の鋳造、貨幣の刻印、纏りのある体系の創出、論理的思考を教えた。きみの理性的な父権を、鬱陶しいだけの母権より上に置いた。きみたち男性のために、分業の原則を発明した。きみに結婚を勧め、おかげできみの財産は増えた。きみの慢性になった割れそうな頭から偏頭痛を取り去った、そのためきみは残念ながら馬鹿になった、おしゃべりで当てにならない男に。きみは私を見捨て、私の信頼を裏切り、われわれの秘術をあるお喋り女にぶちまけた。今後君にとって結婚生活は負担になるだろう…………

 

…………童話の中のイルゼビルではなく、シュヴァーベン出身の私のイルゼビルは、とかく男たちとの貸借を清算したがる、「できるものなら向かってきなさいよ、あなたたちの永遠のワーテルロー。あなたたちの英雄的破産」

 そしてひらめも私の計算書を作成した、「これが収支決算だ、お若いの。かんばしくない。赤字になっているんじゃないかな」…………

 

 

  

 

 受験生の頃愛読したギュンター・グラスの『ひらめ』からの引用。

 この濃密すぎる小説は、男たちに知恵やら勇気やら権力やらもろもろのものを与え続けてきた「ひらめ」が釣り上げられ、女たちの法廷で裁かれるというお話。

 後に代表作『ブリキの太鼓』は映画化され、何年かしてからグラスはノーベル文学賞を受けた。

 そして、自分が若い頃ナチス親衛隊に入っていたことを告白した。

 それから、イスラエルを非難する詩を書いた。

 このあたりは以前書いた通り。

 

 その後、グラスは散々「ナチ」呼ばわりされたようだ。親衛隊所属を告白したときよりも酷く。だが、イスラエル側からは有効な反撃は何もなされていないようだ。

 まあ、イスラエルはイランを攻撃したくて、それで頭がいっぱいみたいだからね。アメリカの腰は今朝の私の腰同様に重くなってるし、頼みのロムニーも落選しちゃったし。

 

Israel's prime minister: Bad bets

http://www.economist.com/blogs/pomegranate/2012/11/israels-prime-minister

 

 どうやら「絶対ロムニー勝つ!!」と信じきっていたようで、あてとふんどしは向こうからはずれると言うか、ほんとに御愁傷様。

 そういや共和党はロムニー勝利を確信して、当選と同時に打ち上げようとボストン湾に大量の花火を準備してたそうだ。これも御愁傷様。花火屋さん、ちゃんと代金もらえたかな。

 

 が、しかし、昨日ドイツ国内において、ユダヤ人ジャーナリストから、盟友マルティン・ヴァルザーともども「反ユダヤ主義者」と訴えられたようだ。

 

 Friedman wirft Walser und Grass Antisemitismus vor

http://www.abendblatt.de/kultur-live/article110879783/Friedman-wirft-Walser-und-Grass-Antisemitismus-vor.html

 

 人種差別は、多くの先進国では立派な犯罪なのだ。それを利用して、イスラエルは批判を封じ込めてきた。

 そういえば昔覗いたアメリカの匿名掲示板でも、「日本批判は反日、ドイツ批判は反独なのに、なんでイスラエルを批判すると反ユダヤなんだよ!」って書き込みがあったっけ。

 非常に微妙な問題なので、老いた二人の文学者が妙な連中に利用されないことを願うばかりだ。

 でもまあ、賭けてもいいけど、スキンヘッズどもは二人の著作なんか一ページも読んでないだろうけどね。