それから、本当にニジンスキー本人を写した映画。どこかの原っぱで『牧神の午後への前奏曲』を踊っていた。もちろんモノクロ。
同じものがYouTubeにないかと探してみたが、断片的なものしか見つからない。しかし、ちょっと面白いものもあった。一九四五年、おそらく精神病院から退院してウィーンの町を歩いていたニジンスキーを撮影したものだ。
ニジンスキーは後半生を精神病院で送ったときいていたので、この影像の存在は意外だった。
すっかり精神を病んだニジンスキーは自分を馬だと思い込んでいたらしい。それについてちょっと小話がある。
ある日のハリウッド。例によってザナックの元に映画企画が持ち込まれた。
「伝説のバレエ・ダンサー、ニジンスキーの生涯を映画化しましょう」
「おいおい、自分を馬だと思い込んだ男の話なんかウケるわけがないだろう。どうやってハッピーエンドにするんだ?」
「最後は、そう、ケンタッキーダービーで優勝させてやるんですよ!」
上記は古いジョークだが、実際に「ニジンスキー」と名付けられた馬は存在するようだ。
……やれやれ。
さて、ニジンスキーといえば、そのまま落ちてこないんじゃないかと思える「大跳躍」の伝説がある。
今考えると、これは「跳躍後の力の抜き方が素晴らしかった」ということではないかと推察できる。
最近「クラシカ・ジャパン」というCATVのチャンネル見ていて、古いバレエの影像を目にする機会が増えたのだが、とにかく昔の男性ダンサーというのは、動きが「重い」。一挙手一投足に力が入りまくってて、何とも重量感がある。ありまくる。
昔はバレエの中心はあくまで女性であって、男はそれを支える存在でしかなかったのだから、それで充分だったのだろう。
なので、映像で昔と今とを見比べると、とにかく男性ダンサーのレベルがはっきりと違うのがわかる。
最近のダンサーは、ジャンプした後力を抜ききっているので、まるで重力から離れてふわふわ浮いているように見えるのだ。
ニジンスキーの伝説の「大跳躍」は、こうした動きが先んじて出来ていたのではないか、と思う。
話は全然変わるけど、羽生結弦ってスケーターはすごいね。今朝のニュースでたまたま目にしたんだが、フィギュア・スケートというもので初めて感動した。変な女に引っかからないか心配になる。
せっかくだからおまけで。
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