デトロイトがゴーストタウンになりつつあるということを聞いてビンセント・チンのことを思い出した

 デトロイトがゴーストタウン化の危機にあるそうだ。

 

米穀自動車の心臓部デトロイト、息も絶え絶え

http://japanese.ruvr.ru/2012_12_12/97680243/

 

 

 デトロイトと聞いて、音楽について思い出す人と自動車産業について思い出す人と、二通りあると思う。

 デトロイト・サウンド(モータウンだっけ)はあまり聞かないから話せることはないけど、自動車産業については一つイヤな話がある。

 

 1982年、デトロイトの路上で一人の中国系青年が殺された。

 金属バットで頭蓋を割られていたという。

 目撃者もあり、犯人はすぐに捕まった。地元の工場で働いていた元自動車工の親子だった。

 解雇の原因は、日本の自動車輸出攻勢で、会社の業績が急激に悪化したからだ。

 親子は酒場で中国系の青年(ビンセント・チン)を見かけると、「日本人め」と因縁をつけた。中国系青年はその場は上手くあしらった。が、頭に血が昇った親子は家から凶器をもってくると、夜の路上で青年を待ち伏せた。

 親子は闇討ちで青年を散々に殴った。金属バットで「ホームランをかっ飛ばすように」(目撃者談)頭蓋を叩き割ったという。

 そしてこの殺人事件、親子に下された判決は、執行猶予と少々の罰金だけだった。

 当時、この親子が白人であり、裁判の陪審員が全員白人だったことが取りざたされた。

 この事件は一編のドキュメンタリー映画にまとめられている。

 

 

 

 映画の中には、犯人の親子に取材しようとするニュース・ステーションの映像もちらっと出てきたりする。

 アカデミー賞を長編ドキュメンタリー部門で受賞。

 

 この映画からは、「誰が悪いのか」がはっきりとはわからない。

 犯人の白人親子ですら、別な意味での被害者のように描かれている。

 今、日本の自動車産業にかつての勢いはなく、それでもアメリカのビッグ3はつぶれかかり、デトロイトは上掲の記事のごとくゴーストタウンとなりつつある。

 真犯人は、そこにいるように思えるのに、それを語る言葉が見つからない。名付けようにもどう呼べばいいかわからない。

 ビンセント・チンが誰に殺されたのか。

 三十年間わからないままで、わからないがゆえにデトロイトは滅びつつある。

 そんな気がする。

 

 

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