ホルヘ・ルイス・ボルヘスという、何度もノーベル賞候補とされながらノーベル賞をとれないまま死んだ作家がいます。なんでノーベル賞をもらえなかったかというと、軍政下のアルゼンチンにいながら反政府的態度をとらなかったから、といわれています。ノーベル賞の選定基準はコンクラーヴェより厳しいですな。
ボルヘスが妄想したものに『バベルの図書館』というのがあって、これはあらゆる書物を所蔵する図書館(?)なわけで、まあ読書家のよくある「夢」みたいなもんです。そこで働く司書たちは、図書館で生涯を終えると排気口から投げ捨てられます。
さて、アメリカじゃあすでに電子書籍を図書館で貸し出してるそうです。
考えてみりゃ、本来タダの「読む権利」を販売するより、こっちの方が正当ですわな。
しかしこれ、貸し出そうと思えば際限なく貸し出せるわけで、電子書籍を売ってる側としちゃたまったもんじゃありませんな。歯止めをかけるためなのか、一部の図書館では有料化の動きもあるようです。
紙の本と違って、借り出すのに順番待ちが三十人!なんてこともないし、質量なんかあってなきが如しで、三つくらい図書館が協力すれば、夢にまで見た『バベルの図書館』が出現しそうです。
もしこっちの流れの方が「太く」なって、少なくとも古典と呼ばれる書籍だけでも全部図書館の電子書籍でさらさら読めるようになったとしたら……?
電子書籍ビジネスってのはなりたつんだろうか?
対策はいろいろ考えられますが、それでも出版はただのビジネスとなり、文化とは呼べなくなるので、いろいろな「保護」の対象からはずされる局面が出てきそうですね。
電子書籍を規制するのは、紙の本よりずっとらくちんですから。
かくて電子の城として出現した『バベルの図書館』は、ゴミの山と化すのでありました。
なんてね。
「読者とは滅んだ種だ」
(ホルヘ・ルイス・ボルヘス)
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