ワーグナーはユダヤ人だったのか?

Was Wagner Jewish?

http://www.revolve.com.au/polemic/wagner.html

 

 ワーグナーはユダヤ人を「害虫」と蔑み、その営為を「ペスト」と呼んではばからなかった。

 最初はフライゲデンクという偽名を使って刊行した、『音楽おけるユダヤ性』にはこう書き記している。

『想起せよ!君たちの上に重くのしかかっているものの呪いから、君たちを解放する道はただひとつだけだ。Ahasverさまよえるユダヤ人からの解放とは——滅亡だけだ」

 なんというか、バカすぎて弁護のしようがない。溺れかけのセミだってもう少しマシな鳴き声を出すんじゃないか。

 しかも妻のコジマまでもそれに同調していた。しかし、コジマはリストの娘ということばかり知られているが、母方はユダヤ人銀行家ベートマンを祖父としている。

 そしてワーグナー自身は……

 ワーグナーは七人兄弟の末っ子として生まれた。赤ん坊の時に実父が死に、母親ヨハンナはルートヴィヒ・ガイアーという男と再婚する。ガイアーは演劇好きだった亡父のご贔屓で、ザクセン宮廷俳優の称号を受けるほどの名優であった。また劇作家としても『ベツレヘムの嬰児殺し』という台本を著し、ゲーテから賞賛されるほどだった。

 ワーグナーはこの継父に、実子以上に可愛がられて育った。それどころか、ガイアーこそがワーグナーの実の父親である、というゴシップをワーグナー自身も信じていた節がある。

 そしてこのガイアーがユダヤ系だ、という話があるのだ。

 ニーチェは、そのことにうすうす感づいていた、とフィッシャー=ディースカウは書いている。

ワーグナーとニーチェ (ちくま学芸文庫)

 

 こうした言説は浅薄な「反ユダヤ主義」に利用されやすいので気をつけなくてはならないが、ヒトラー=ユダヤ人説という、否定されても否定されても浮かび上がってくる妄説よりは、多少の真実味がありそうだ。

 ワーグナーは若い頃、むしろユダヤ人たちと積極的につきあい、ユダヤの出自を隠さず堂々とふるまうアウエルバッハと親交を結んでいた。

 これは軽々に判断していいことではないし、本当に本当のところは判らない。

 

 ところで、ワーグナーにしろヒトラーにしろ、ユダヤ人ではないかと疑われるのは、共通の別な理由がある。

 それは、背が低い、ということだ。ヒトラーは言わずもがな、ワーグナーは妻のコジマよりも頭一つ低かった。

 ユダヤ人の身体的特徴として「鼻が大きい」ということがよく言われるが(魔女の鼻が大きく描かれる理由)、もうひとつあまり口にされないことに「背が低い」というのがある。

 年末になるとコンビニの棚にわき出るトンデモ本に「日ユ同祖論」のたぐいがある。日本人はユダヤ人の失われた支族の一つだ、という珍説だ。それを最初に提出してきたのはユダヤ人側からだった。おそらく日本人の背が低いのが、そうした発想のきっかけになったのだろう。