誰も読まないと思うからちょっと吐き出しておこう

 ボストンで、ある事件がおきた。

 圧力鍋の誤った使用法により、ゼンマイで走るたくさんのものやそれを見るもっとたくさんのものがたくさんたくさんたおれた。

 走るもののなかで、たいしてこわれなかったものは、起き上がらせてやるとまたゼンマイがほどけだして、自動的にゴールした。こわれたものはそのままになった。

 見るもののなかにはちいさなこどもがいた。こどもはゼンマイで走るものが大好きなのだ。そして、圧力鍋でつくられるたいていのおかしも好きだ。たとえばプリントか、むしパンとか、カップケーキとか。

 幸せなたくさんのものがなぎたおされて、人々はたくさんのなみだを流した。

 

 遠くはなれたガザというところで、たくさんのこどもが死んだ。

 死んだたくさんのこどもたちは、圧力鍋でつくるおかしをたべただろうか。たべたらきっと好きになっただろう。圧力鍋でつくるおかしは、こどもたちを魅了せずにおかない。

 死んだたくさんのこどもたちは、ゼンマイで走るおもちゃが好きだっただろうか。手にしたらきっと好きになっただろう。ゼンマイで走るおもちゃは、こどもたちを魅了せずにおかない。

 

 ボストンで死んだこどもは、どこかかなしい目をしたこどもだった。

 なまえも写真も人々が目にし、そして人々は涙した。

 ガザで死んだたくさんのこどもは、ただたくさんいたということしかわからない。なまえも顔もわからない。ただ、たくさんということしかわからない。

 

 たくさんのこどもたちはなにが好きだったか。

 たくさんのこどもたちはそれぞれどんななまえをもっていたか。

 たくさんのこどもたちはどんな顔をしていたか。

 たくさんのこどもたちはなんのうたが好きだったか。

 たくさんのこどもたちはおかしはなにが好きだったのか。

 たくさんのこどもたちはおもちゃでどんなふうに遊んだのか。

 

 ほんとうにほんとうにおそるべきこと(terror)はここにある。