はい、本日は中原中也の誕生日です。明治四〇年の生まれですから、百六年前ですか。え、別な人のことだと思った?誰かいましたっけ?
中也と言えばこの写真ですが、立原道造によれば「もっと普通のおっさん」な感じだったそうです。あと、胴長短足。奥さんが「お見合いした時は背の高い人だと思ったのに」とこぼしたそうで。
それから酒乱でわがままで金持ちのボンで働いたことがなくて、これで詩の才能がなかったらどうしようもない人でした。
こうして考えると、「詩」てのはおそろしいですな。七難どころか百難かくしちゃう。
さて、『中原中也全集』は「新編」がようやっと二十一世紀になって刊行されました。なんでわざわざ出し直したかというと、新発見の資料などが出てきたこともありましたが、それまでの全集は編集した大岡昇平の意図が入りすぎて、勝手に変えられちゃってた部分があったからです。
特に、ランボーの詩の翻訳とか。大岡昇平は中原中也の翻訳詩を見てチェックしていたので、全集版に載せるに当たってあきらかな誤訳を直しちゃったんですね。大岡氏にしてみれば、亡き親友への親切心だったのでしょうが、読む方からすればいらん世話ですわな。
そんなわけで、大岡氏の死後に編み直しが始まり、ようやく二十一世紀に日の目を見たというわけです。
編集ってのは裏方作業に思われがちですが、作品のあり方を左右してしまう重要な仕事なんですね。
ところで、『在りし日の歌』の初版が店に在庫していますが、どなたかおもとめになりませんか?
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