今朝、開業前に一家で高尾山に登ってきた。
そうしたら娘が自分の荷物に漫画と小説(ライトノベル)を三冊突っ込んできて、「いいかげん、どこにいくにも漫画を持ち歩くのをやめろ」と苦言を呈した。さすがに山の中では読まなかったが、行き帰りの電車の中では読みふけっていやがった。
実はその様子を見て昔の自分を思い出したりしていたのだが、やくたいもない思い出話はこの際置いておく。
さて、古本の中で「登山もの」というのはひとつのジャンルになっている。
登山専門の古書店も存在するくらいだ。
登山「家」として名をなす人はちょくちょく本を著すし、また著者の登山家自身がたいした読書家である場合も多い。
やはり独りでキャンプする時など、長い夜を読書して過ごすこともあるのだろう。
では、また定番の問題だが、
「独りで山に登った時、どんな本を持って行きたいか?」
これは割と困る質問のような。
都会的なハードボイルドも、宇宙を駆け巡るスペースオペラも、現代的で退廃的で内省的なあれこれも何か違う。荷物にならない薄いサイズで、持ち歩いても邪魔にならないもの。しかも山の中で読んでも違和感を感じない内容……
けっこう難しい。
漱石・鷗外クラスは少し重い。芥川の『侏儒の言葉』くらいならいいか。あと幸田露伴の短編集。『遠野物語』はハマりすぎて返って読めなくなりそう。
侏儒の言葉・西方の人
(新潮文庫)
幻談・観画談 他三篇
(岩波文庫)
翻訳物はどうだろう。カフカ、ジョイス、プルースト、トルストイ、ドストエフスキーあたりは御免蒙りたい。ソローの『森の生活』?これもハマりすぎのような。シュティフターの散文なんかは意外とイケルかも知れない。
そういえば、現代文学でこれといってふさわしいものが思いつかない。どれもこれも、「閉塞した状況」で読むことを前提としているように思われる。
私個人としてなら、犬塚堯の詩集かな。文庫判サイズでないのが難点だが。
最後に付け足しとして、作家の夢枕獏は元登山家。
駆け出しの頃、「山岳SF」というニッチすぎるファンタジー短編をいくつも書いていた。
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