えー、本日六月十六日は「ユリシーズの日」、かの地においては Bloomsday と呼ばれる日であります。Bloomsday てのは、『ユリシーズ』に登場する主人公の一人、Leopold Bloom からきています。
『ユリシーズ』はアイルランドが生んだ天才作家、ジェイムス・ジョイスの代表作で、現代文学の最高傑作との呼び声も高く、えー、まあその、誰にでもお勧めできるというたぐいの小説ではありません。
大体現代文学の最高峰と言うと、カフカ、プルースト、ジョイスがあげられることが多いんですが、この中で一番読みづらく、かつまた下世話でもあります。エロチックな描写のせいで、永らくアメリカでは発禁にされてました。
で、『ユリシーズ』は千ページを越えようかという長編なんですが、全部「六月十六日」というたったの一日の出来事なんですね。それで本日を Bloomsday と名付け、世界中のジョイスマニアたちがイベントを行っています。
さて、この小説は一応ホメロスの『オデュッセイア』のパロディ、直接的には
ジョイスが子供の頃に読んだチャールズ・ラムの翻案による『ユリシーズの冒険
』を下敷きにしています。なので、この二つを読まずに『ユリシーズ』を読んだりすると、地図もなしにインドの下町に放り込まれたように、なんのこっちゃらわけがわからなくなります。でも読んでたからってわかるわけじゃないけどね。そんな読者のために、丸谷才一他訳では各章ごとに内容のまとめが冒頭に掲げられています。なんて親切なんだ。
ホメロス
オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)
ホメロス
オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)
初めて読む方への「お楽しみ」としては、『オデュッセイア』には某アニメのもとになった「ナウシカ」が登場するんですが、『ユリシーズ』にもそのパロディとおぼしきエピソードがありまして、えー、なんですか、その、けっこうアレな感じに書かれておりますな。気になる方は読んで確認して下さい。
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