イタい子!ショーペンハウエル恋愛編

若きショーペンハウエル
若きショーペンハウエル

 とかく哲学者にとって「女」は鬼門だ。

 恋愛において勝者と呼べる者は数少なく、その深遠なる哲学とは裏腹に、およそ「女」については浅薄な愚痴を書き連ねることが多い。職種(?)別に見れば、生涯独身率の高さはピカイチではなかろうか。ソクラテスやプラトンがホモだった呪い?

 そのくせ、ムッツリさんが多い、というのも、まあ、むべなるかなというか、やんぬるかなというか。

 斜視の女と見れば片っ端から惚れたデカルト、下宿のおかみと子どもを作りながら結婚は拒否したヘーゲル、小一時間いっしょに散歩しただけでプロポーズしたニーチェアルチュセール にいたっては奥さんを殺してしまった。

 ご他聞にもれず、ショーペンハウエルもその辺はぐだぐだだった。

 

 まず、ドレスデン時代に子どもを作っちゃっている。一八一九年だから、昨日のエントリーで書いた商会の倒産騒動の真っ最中である。

 これについては妹のアデーレが散々かけずり回って善後策を講じたが良い結果を得られず、子どもは伝染病にかかって死んでしまった。

 一応ショーペンハウエルを弁護しておくと、この時代、ちょっと財産や社会的地位があれば、庶子を作るのは当たりまえだった。

 それからベルリンに引越して、カロリーネ・メドンという舞台女優といい仲になった、ということになっている。例のおばはんをたたき出した事件も、そのときラウンジでカロリーネと会う約束になっていたので焦ったのだ、という話もあったりする

 一応断っておくと、女優と言えば今やいっぱしの職業だが、当時はちょっと名の知れた高級娼婦というか、複数の旦那を抱える愛人稼業が本業のようなものだった。実際、カロリーネはショーペンハウエル以外にも男がいて、女優にとってショーペンハウエルは数いる男たちの一人、というか、かなり下の方だったと思われる。だって、カロリーネは父親が違う子どもを何人も生んでいたのに、ショーペンハウエルの子と思われるものはその中にいなかったんだから。けっこうおあずけを食わされてたんじゃなかろうか。

 しかしショーペンハウエルは彼女のことを「可愛い王女」と呼んでかなり貢いでいたようだ。なんたって、その後いったん関係は途絶えたにも関わらず、遺産をカロリーネに遺しているんだから。実はこれ、七十歳になって大哲学者として名声を得たショーペンハウエルに、カロリーネが手紙を出したのがきっかけなんだが、このエピソードを「美談」にしあげる伝記作者の筆は、どれを読んでもかなり苦しそうだ。だってカロリーネの手紙ってば、ご無沙汰のお客をまねくキャバクラ嬢のものいいそのまんまなんだもん。哲学者ってのは、いくつになっても手玉に取られちゃうんだね。

 

 もっと苦しいのが、一八三一年八月の出来事。

 ショーペンハウエルは四十三歳にして恋をした。恋した相手の名はフローラ・ヴァイス。そのとき十七歳。

 えー、その、現代なら犯罪だとかいうのはさておいて、まあその、ゲーテだって奥さんが死んだあと、七十二歳にして十八歳の女性にラブレター送ってんだから(最初、母親の方が自分宛かと思ったそうだ)、それに比べれば…と思わなくはないこともないんだけど……

 ショーペンハウエルは十七歳のフローラに正式にプロポーズして、ばっちり振られてる。

 それ以前にも声をかけたり手紙を書いたり贈り物をしたりしてるんだが、フローラちゃんは右から左に捨てちゃいました。ブドウを送られたときは、一粒も口にせず川に投げ捨ててる。現代なら「おっさんきもい」ぐらい言ってそうだ。

 

 そんなショーペンハウエルは晩年『女について』(『余録と補遺』の一部)という書に、自らの女性観を赤裸々につづっている。

 曰く、

「女性の狡猾さは、本能的といってもよく、その嘘つきの傾向を全然なくしてしまうことは出来ない」

 曰く、

「(女たちの)虚栄心は、特に、その理性の貧弱なためでもあるが、女たちを浪費に傾かせる」

 曰く、

「女の姿態を一瞥すれば、すぐさま、わかることだが、女は精神的にも肉体的にも、大きな仕事をするのには、生まれつき、ふさわしくないのである」

 曰く、

「一夫一婦制の布かれている、わたしたちのヨーロッパ地区において、「結婚する」ということは、男性が自己の権利を半減し、かつ、自己の義務を倍加するという意味になる」

……などなど。

 こういう本音ってのは、見透かされちゃうんだよね。見透かされるからモテない。モテないから余計にひねくた本音を抱えるようになる。それがまた見透かされる……というデフレスパイラル。

 いかな大哲学者といえど、この地獄からは容易に抜け出せるものではなかったようだ。

 

 

ショーペンハウエル、女について (1968年) (角川文庫)

 

 

 

 さて、三回にわたってショーペンハウエルをあれこれと書いてしまったが、彼の著作はまぎれもなく歴史的名著であり、その哲学は後世に多大な影響を残したことは間違いないのだ。

 え、今さら遅い?

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コメント: 5
  • #1

    1 (金曜日, 19 6月 2015 01:09)

    哲学者は理性で人と接するから、女性にも当然そうした性質が備わってると思ったんでしょう。
    男と接するように女性にも接した。

    ところが、接すれば接するほど、女性は嘘をついたり、他人を踏みにじる事に何の抵抗も無く、論理的に思考出来ない事を知る。

    無邪気で邪悪な、女というものを知ったうえの結論として、妥当だと思いますね。

  • #2

    2 (木曜日, 28 4月 2016 23:46)

    ※1に同感だなぁ。

    女が怖かったのではないか…とか、モテなかったコンプレックス…とか、ショーペンハウエルを見下したような物言いってたまに見るけど、
    本人はその位の事はとっくに考えた上だろ。
    馬鹿が自分の小さい物差しで大哲学者を測るなよ、と思うわ。

  • #3

    (日曜日, 29 5月 2016 15:29)

    お前ごときがショーペンハウワーについて何がわかるのか?

  • #4

    (水曜日, 05 10月 2016 02:46)

    たとえ大哲学者でも
    この手のことを言えば言うほど
    すっぱい葡萄にしか思われないってことが
    分からないのだと思うと、なんだか微笑ましいです

  • #5

    5 (火曜日, 07 2月 2017 06:45)

    すっぱい葡萄を勝利宣言のように振り回す愚かな人がこんなところにも・・・