自由ってなんて不自由なんだろう♪なんてセックス・ピストルズ風に歌ってみたりして「アナーキー・イン・ザ・UKなハイエクにびっくり編」

貨幣論集 (ハイエク全集 第2期)

 

 ハイエクは晩年、とんでもない論文を書いている。

 その名も『貨幣の脱国営化論』

 ひと口で言って、通貨の発行権を国家に独占させず、民間でも発行できるようにしようぜ、ってこと。ひょえー。なんかすごい。ここまで来るともう、ハイエクは大学の論壇じゃなく、焼け付くようなライトを浴びながらステージに立ち、髪の毛逆立たせて鼻やら耳やら口やらにピアスを打ち、中指立ててOi!Oi!!言ってるような感じだ。

 これは裏読みなんてもったいないことをせず、そのままエッセンスを引用してみよう。

 

…………

 貨幣の歴史を研究すると不思議に思われてならないのは、なぜ人々は二千年以上にわたり排他的な権力を行使して自分たちを絶えず搾取してきた政府に対して、これほど長い間我慢してきたのかということである。その理由は、「政府特権は必然的なものである」という神話によってのみ説明できる。その神話があまりにも堅固に確立されていたので、貨幣問題の専門的研究者でさえ(長い間、筆者(注:ハイエク自身)も含めて)そもそもそれに疑問を呈することさえ思いつかなかったのであった。

…………

ローマ時代から多様な形の紙幣が重要になり始めた十七世紀にいたるまでの硬貨鋳造の歴史においてほぼ絶え間なく見られるのは、品質低下、すなわち、硬貨の金属含有量が絶えず減少し、それに応じて全商品価格が上昇するという話である。

…………

歴史の大部分はインフレーションの歴史であり、しかもたいていは政府が自らの利益のために企んだインフレーションの歴史であると述べても誇張ではない。

…………

あたかも政府なしには存在できなかったはずの貨幣を政府が創造したかのように、何が貨幣であり得るかを政府(国家)が宣言する必要があるという迷信は、貨幣のような道具は最初の発明者によって「発明」され、われわれに与えられたに違いないという素朴な信念に端を発したものであろう。

…………

悪貨が良貨を駆逐する傾向が貨幣の政府独占を必然的に生み出すと思うのは、いわゆるグレシャムの法則についての誤解である。

…………

貨幣は、通常、一般的に受領される唯一の巷間手段であると定義されている(注:カール・メンガー)が、ある一定のコミュニティ内部で、一般的に(または少なくとも幅広く)受領される貨幣が一種類だけであるという理由は存在しない。

…………

貨幣であるものと貨幣でないもののあいだには明確な境界線があると普通は想定するし、法は概してそのような区別を設けようとするけれども、貨幣的事象の因果関係に関するかぎり、そのような明確な違いは存在しないのである。

…………

実際上、経済理論のたいていの数量的定式化は不適切なものである。

…………

科学者としての経済学者の仕事は、今日では政治的に不可能かもしれないことを政治的に可能にすることにあるはずである。現時点で行いうることを決定することは政治家の仕事であって、経済学者の仕事ではない。経済学者が指摘し続けなければならないのは、こうした傾向に固執すると大惨事にいたるということである。

…………

あらゆるインフレーションが非常に危険であるのは、まさに、多くの経済学者を含む多くの人々が、マイルドインフレーションを無害であるばかりか有益なものとさえ見なすからである。

…………

これまで学ぶべきであったことは、金融政策は不況の解決策どころかむしろ多分にその原因であるらしいということである。

…………

市場経済の過去における不安定性は、市場メカニズムの最も重要な調整装置である貨幣それ自体が市場過程によって調整されることから排除してきたことの帰結なのである。

…………

実際に、「国際収支問題」とは、固有の国家通貨が存在することから生じる全く不必要な効果であるということが理解されるであろう。

…………

中央銀行及び貨幣発行独占の消滅とともに、利子率を意図的に決定することの可能性も当然ながら消滅するであろう。いわゆる「金融政策」の消滅は全く望ましいことである。

…………

政府による貨幣独占の廃止は、過去六十年間にわたって世界を苦しめてきた激しいインフレーションとデフレーションという発作を防ぐために考えだされた。それは、調べてみると、もっと根深い病気、すなわち、資本主義に内在する致命的な欠陥であると表現されてきた不況と失業の循環的な波動にとっても、強く切望される治療法であることがわかる。

…………

 

 このハイエクの論説くらい、リバタリアニズム(絶対自由主義)がアナーキスム(無政府主義)に近いことを体現したものはあるまい。突き詰めれば国家nationだって自然natureに近いのだ。それはnativeという形容詞の一致に端的に顕れている。

 そして、インターネットとという、人類史上最高に脱自然的な空間を形成した「ツール」によって、新自由主義的な考え方はどんどん広まることだろう。そういえば「ビットコイン」とかやってんだっけ。いろいろ増えてくるんだろうね、こういうの。

 

 このアナーキーな主張は国家の枠をはずして思考しているがゆえに、それとは知らず人口減少局面での経済の在り方にヒントを出している。もちろん通貨を民営化するのは無茶だが、もし将来道州制が本気で導入されるなら、各州にはそれぞれ通貨発行権を与えるのがいい、ということだ。地域通貨などという半端なものではなくどこでも、できれば海外でも通用するようにする。

 人口が減って困るのは経済を動かす単位が減少するからだ。独自通貨を増やすことでマネーストックが多様化すれば、動かす単位も増えることだろう。通貨が二種類になれば単純に二倍、とはいかずとも一・五倍くらいにはなるのではないだろうか。いかがだろうか。

 そして将来、減少に歯止めがかかれば、またゆっくりと統一していけばいいと思うのだが。