自由の国アメリカでの焚書についてのメモ

合衆国議会は、国教を樹立、または宗教上の行為を自由に行なうことを禁止する法律、言論または報道の自由を制限する法律、ならびに、市民が平穏に集会しまた苦情の処理を求めて政府に対し請願する権利を侵害する法律を制定してはならない。

 

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 上記はアメリカ合衆国憲法修正第一条。しょっちゅう危機にさらされる、一昔前のハリウッドの冒険ものに出てくるヒロインみたいな存在だ。ちなみにこのあとの修正第二条が、銃で武装する権利を認めたやつ。例えるならジャック・マッコールか。え?マッコールが振り回したのは包丁だろって?さあ、どうだったっけ。

 とにかくアメリカはその建国時に、英国野郎がやらかした不正裁判を暴くバンフを燃やされて以来、こいつを守るのが国是ということになっている……はずなんだが、しょっちゅう焚書が行われてしまう。左の画像はニューヨークで「悪書追放」をやってた団体が胸につけてたワッペン。右半分の画像、あからさまに華氏451度してる。

 さて、第二次大戦が終り、冷戦が始まる頃、来るマッカーシズムを予感させるような出来事が起きた。

 大量のComicsが焚書されたのだ。

 焚かれたのは別にエッチな本とかそう言う類いじゃなくて、ただのホラーコミックスだった。

 なんかドイツ生まれのユダヤ系精神分析学者フレデリック・ヴェルサムてのが、「これは危険だ。子供に悪影響を及ぼす」とかぬかしたのが発端だそうだ。このおっさん、ドイツで医学を修めた後に渡米、それからフロイトと文通して精神分析学者になったらしい。通信教育って、すごいね。

 そんなわけで、良い子のみんなが夜に一人でトイレに行けなくなっちゃうようなホラーコミックは、世界一優しいママと世界一ステキなパパの手ですべて灰となったわけだ。

 左がアメリカの良い子たちを堕落させる悪魔の書、のうちの一冊。わー、すごいこわい。てかキモイ。絵柄が。こら焚かれるわ。うん。

 こんなん、真っ昼間に見たらギャグ以外の何ものでもなかろうに、何をそんなに怖れたんだか。ラジオで火星人が来るとかパニクったりしたわけだ。

 

 そしてこの後にも焚書は続く。

The Scientific Assasiation of Sexual Revolutionary

http://motherboard.vice.com/blog/the-american-quest-to-kill-wilhelm-reich-and-orgonomy

 今度はモノホンのフロイトの弟子でもあった(後に決別)ウィルヘルム・ライヒの本を焚いた。こっちは怖いからじゃなくて、えっちだから。

 フリーセックスを推賞したとされ(そう読み取られてもしょうがないけどね)、ライヒ自身の著作だけでなくライヒに連なる関連書籍、オルゴン・ボックスについてふれた書籍まで徹底的に焚かれた。どうみてもやりすぎ。フロイトの著作を焚いたナチスだってそこまでしなかった。

 そしてその後も、インタビューで「おれたちって、キリストより人気あるんじゃね?」と口を滑らしたビートルズの本、だけでなくレコードをも焚いたり、カートヴォネガットの小説を焚いたり、二十一世紀になってもハリー・ポッターを焚いたりしてる。ハリー・ポッターを「邪教だ!」とか禁じているイスラム過激派のことをどうこう言えない。

 

 このように、新世紀になっても気の休まることのない修正第一条だが、憲法を守るのに熱心な修正第二条信者の方々が、なぜか率先し踏みにじって下さるのだった。困ったもんだ。