アニメ「サザエさん」はニーチェである

「サザエさん」で上掲の歌を聞いたことがあるだろうか

 歌詞の内容はこうなっている。

 

お空が大きく見えるのは

わたしがそこにいるからよ

地球が動いているのはねえ

わたしが笑っているからよ

だけど笑ってばかりもいられない

サザエさん まだまだやらなきゃならないことが

わたしを呼んでるの カツオとワカメ

みんなわたしについといで

 

 なんとすばらしい。世界の中心が「わたし」であることを、てらいもなく宣言し、なおかつ人々に認知させようとしている。

 そして、ニーチェは有名な『ツァラトゥストラはかく語りき』の冒頭において、ツァラトゥストラにこう叫ばせている。

 

…………

……——ある朝、ツァラトゥストラはあかつきとともにおき、太陽を迎えて立ち、つぎのように太陽に語りかけた。

「偉大なる天体よ! もしあなたの光を浴びるものたちがいなかったら、あなたははたして幸福と言えるだろうか!

 この十年というもの、あなたは私の洞穴をさして上ってきてくれた。もしわたしと、私の鷲と蛇とがそこにいなかったら、あなたは自分の光にも、この道筋にも飽きてしまったことだろう。

…………

 

 

 

 この、天体の運動をも己を中心に考える傲慢さ……似ている。

「サザエさん」がニーチェに似ているのはこの部分だけではない。

 

 カツオのテーマ曲という、ほとんど知る人のいなくなった歌があるのだが、その歌詞の内容がこれだ。

 

 星を見上げて ぼくは考える

どうして ぼくだけ 頭がいいのだろうか

 すてきなぼくを かしこいぼくを

どうして 先生は 知らないの

 

 そしてまたニーチェは『この人を見よ』において、こう書くのだ。

 

…………

 

なぜ私はこのように頭が良いのか

 

…………

 

 

 なんとすばらしい。この永遠に年を取らぬ聖なる家族は、ニーチェの哲学を体現していたのだ。「神は死んだ」といつサザエさんが宣言してもおかしくない。神なき日本において、サザエさんこそは新たなる神である。

 聖サザエさん!サザエさんにバクティ(帰依)せよ!!

 

 ……てなこと書いてしまったけど、アニメの「サザエさん」を最後に見たのは大学受験の頃だから、もうかれこれ三十年見てないんだよな。まだやってんだっけ。

 マンガの方は娘が大好きなんでちらちら見ることがある。

 なかでも『サザエさんのうちあけ話』は興味深い。長谷川町子が田河水泡の内弟子だった頃、田河夫妻がクリスチャンになるきっかけを作ったことが出てくる。田河水泡の妻はのちに高名な伝道師となった高見沢潤子で、評論家小林秀雄の妹でもある。

 

サザエさんうちあけ話・似たもの一家