とにかく味の素!なにがなんでも味の素!!

 とにかく昔は、どんな食べ物にも味の素を入れていた。

 ゴハンには味の素を振りかけ、味噌汁に味の素を入れ、漬物に味の素をぶっかけ、干物を焼いても味の素、サバを煮ても味の素、しまいにゃスイカにかけたり、大福やせんべいにかけたり、熱燗に入れるビールにも入れる、ついには「味の素を煙草にチョイと書けてから吸う」なんてのまで現れた。

 なんでも万能、なにより無敵、そのうち味の素をガソリンに混ぜると燃費が良くなるとか、味の素でガンが治ったとか、味の素のおかげでこんなすてきな彼女が!とか言い出しそうな勢いだった。

 後半部は冗談だが、冗談でなくマジメに信じられていたことに

 

「味の素を食べると頭が良くなる」

 

 というのがあった。

 なんかどっかの学者が、「グルタミン酸は脳に良い」と言ったとか言わなかったとかで、この妄説はああっと言う間に広がった。誰かがツイッターでつぶやいたわけでもないのに。ネットなんかない時代からこういう話に人がとびつくのは、本能とかDNAとか前世の因縁とかで歯止めが利かないのかも知れない。餌の代わりにプルタブをつけても食いつくどんこを笑えない。

 

 そんなわけで、幼い私は山ほど味の素を食わされた。親心というやつである。

 しかしそれがある日、ぱたっとやんだ。

 別に「味の素は蛇から作ってる」というカウンター・インフォメーション(笑)を真に受けたわけじゃない。

 なんか調子に乗った味の素が値上げしたからだ。やれやれ。

 

「ぼくが絶対に確信を持てるのは味の素だけだ」と太宰治は言った。そして、シャケ缶をどんぶりにあけて、味の素を山ほど振りかけて食べた。

 もしかして、太宰治のインスピレーションの元は味の素だったのだろうか。

 しかし料理マニアでもある檀一雄は「味の素なんか使わないよ」と言っていた。それなのに味の素のCMに出演したのは、「太宰も味の素を好きだった」からだ。

 

 さて、私も味の素はもう数十年購入してないが、そろそろ使ったほうがいいんじゃないか、という妄念に取り付かれている。娘の勉強ぶりがさっぱりだからだ。ほんと、少しでも効き目が有るんならすがりたいよ。

 いや、食べた方が良いのは私の方かな?

 

 

「味の素」発明の動機